『 来年こそ確かな歩みを! 』
・・・・・ 理事長 島田昌幸 ・・・・・
月日の経つのは早いもので、当会が設立されてから既に14年の年月となりました。この間、会の名称も「江戸城天守再建を目指す会」から、「江戸城天守を再建する会」へと、「やりたい」から「やる」会へ強い意志を表したものに変わりました。運動の輪は確かに広がってきましたが、実現に向けた歩みはまだ遅々としたものに過ぎないことを率直に認める必要があります。
何故そうなってしまったのか。最大の要因は東御苑という皇室のお庭であることに加え、それ自体が文化財である天守台の上に天守閣を再建させて頂くという事業の特殊性、難しさに真正面から向き合ってこなかった運動自体にあったと思います。どうしたら皇室の資産をお借りして事業を進められるのか。課題をひとつずつ取り上げて、克服すべき具体的な計画を作って運動を進めていくことがまず必要です。2年後には新しい天皇陛下が即位され、年号も改まります。新しい世紀への祝賀のプロジェクトでもあることを、関係者の皆さんに理解していただく努力が欠かせません。
組織運営体制の構築も課題です。計画準備段階での調査・研究や全体構想の作成にあたる一方、事業資金の調達も担う事業主体をまず組成する。皇室の資産をお借りすることを前提とした事業ですので、優れて公益性、公共性を持った組織でなければならず、この事業主体が建設、運営の母体となります。実際に施設の建設、管理、運営に当たるのは、この母体から委託を受けた実施事業体です。NPO法人は引き続き草の根で事業を支援しますので、全体は三位一体の構図です。
ここで大事なのは、NPO運動がどこかに引き継がれて解消してしまうことはないという点です。むしろ、建設場所の特殊性を考えると世論の支持を得ることがますます重要になります。賛同署名が50万人を超え100万人を達成できるようになれば、運動は質的に大きく変化して、推進力を増します。来年3月の総会には、天守再建に向けた戦略を中期計画としてまとめ、ロードマップを改めて提案したいと思っています。
ここで、今年初めに登記された一般財団法人(ルネッサンス)との関係について申し上げておきたいと思います。今年3月の総会でお話しした通り、これまでは「車の両輪」との考え方でお互いに協力しあって天守再建の目標に向けた運動を進めていくことにしていましたが、残念ながら今までのところ話し合いの場すらできていない状況が続いています。目標達成への時間的制約もありますので、まずは私たちNPOとして天守再建への道筋をしっかり作って、運動を進めたいと思うに至りました。会員の皆さんと賛同署名をいただいた約4万人の方々への責任からも、時間の無駄使いはできないと考えました。
3年後のオリンピック・パラリンピックとその先を見つめて、東京の文化発信力をもっと高めていくことが求められています。その拠点として江戸―東京と続く歴史の歩みを知り、体感できる空間を整備することが大きな足掛かりになるのではないでしょうか。
皇室の文化と日本の心を、日本人自身が学び、訪れる多くの海外の人たちにも知ってもらう場、そのシンボルとしての江戸城天守の再建。そして、それが新しい天皇の世紀のモニュメントとなるような運動に高められたら嬉しいことです。
会員のみなさん、NPO法人は会員全員が運営に参加する開かれた組織です。次の1年を、我々の夢実現のための確かな年とするために、どうかいろいろなご意見をお寄せください。お待ちしています。
(かわら版46号巻頭言より写し)