会員インタビュー

滝田 栄さん

私が造ったお城ですからね。ぜひ再建を実現したい

江戸城天守再建への思いを聞くと、「私が造ったお城ですからね。ぜひ再建を実現したい」とユーモアたっぷりに語ってくれた。日本を代表する名俳優だが、最近では仏像彫刻家としても知られる。その仏像や仏教への関心も、1983年に放送されて高視聴率だった大河ドラマ「徳川家康」で家康を演じてからだという。

「私は歴史を動かした精神に関心があるんです。太平の世を造り上げた家康の心の奥底に何があったのか。家康を演じていた時はもちろん、それからずっと学び続けています」

滝田さんは、それは少年時代を過ごした駿府での経験が大きいと考える。「家康は人間形成期に禅僧に教育を受けたといわれています。心の深いところに仏教の教えが根付いたのでしょう。明治以降の徳川氏をおとしめる風潮の中で狸などと言われますが、本当に戦のない世を願っていたのだと思います」

家康の旗印は「厭離穢土 欣求浄土」の文字。浄土宗の言葉だが、「自らの欲望を捨て、戦で汚れた国土に永遠の平和をもたらす」との気概だったろうと滝田さんは考える。実際、家康の努力で、江戸時代という300年近い平和の時代がもたらされた。

「江戸時代の日本は、外国人の目からしても本当に豊かな社会だったようです。明治以降の日本は物質的な、金銭的な豊かさにばかり目が行きがちですが、改めて江戸の精神性を学び直すときに来ているのではないでしょうか」という。それを意識するシンボルとしての江戸城天守再建に期待する。

「その時大事なのは、上っ面だけでない、深い意味での江戸城天守の意義の理解だと思います。シンボルを造るのは大事ですが、中身を学ぶ機会にしなければ」と再建のその先までも見据える。

今の東京人たちには、「東京に住んでいる人は江戸に住んでいる自覚もないし、実感がない。それはちょっと寂しい」と苦言を呈する。

戦国の物語に出演する際、織田信長が拠点だった清洲城から有名な桶狭間までどのように進んだか、実際にたどってみたことがある。すると距離感や雰囲気が非常によくわかり、にわかに桶狭間の合戦が肌で感じられるものとなった。

「東京も実際に自分の足で体験すると、歴史などもいろいろなことが実感できますよ」

ご自宅近くでお話しをうかがったが、ジーンズとTシャツにキャップをかぶり、自転車をこいで現れた。しかしラフな出で立ちでも、大俳優ながらやわらかな物腰に品格を感じた。一方で歴史や時代を語る際には堅い信念も垣間見えた。こうした方が会員にいらっしゃるのは心強い。

取材・文 黒田 涼
(作家・江戸歩き案内人)