会員インタビュー

作家 江戸歩き案内人
黒田 涼(くろだ りょう)

江戸街歩きの解説中

歴史を知れば、東京がもっと好きになる

『江戸城を歩く』『江戸の大名屋敷を歩く』(祥伝社新書)などの著書でも、早いうちから「江戸城再建」を訴えてきた。神奈川県生まれで、新聞社に勤務し川越、山形に駐在。その後東京勤務になり、健康のためもあって通勤に自転車を利用するようになった。

自宅は中央線沿線で、会社は東京の東側にあたる。朝夕、通勤にいろいろなルートを通ったが、東京を横断するには、どうしても皇居にぶつかることになる。今日は皇居の北側、明日は北の丸側など、いろいろな道を通るうちに、思いがけない場所に江戸城の痕跡があることに気づくようになった。

ある時、虎ノ門の霞が関ビルの向かいの一角に、江戸城の外堀の石塀を発見。また、溜池に碑があると聞き探したところ、高速道路の下に確かにあった。 「へえぇ、こんなところに…知らなかった」

江戸時代のはじめ、現在の赤坂見附から虎ノ門手前(特許庁の前付近)までの外掘通り(約1.4㎞)は、「溜池」と呼ばれる江戸城の外濠で、細長い池だったのだ。江戸城で最初の水道水も兼ねたと考えられ、せき止めたあたりは、かなりの水量だったのが、浮世絵に描かれている。徳川家光が遊泳したという記録もあり、いろいろなことが分かってくると、「東京に住んでいるのに、知らないなんてもったいない。みなにぜひ教えてあげたい」という思いがあふれ出る。

新聞でも連載したが、あちこち取材するうちにますます詳しくなり、ついに江戸街歩きの専門家になってしまった。「江戸城天守を再建する会」では、今までに江戸歩きツアーを4年間で12回ほど実施し、案内してきた。

街歩きの参加者が「へええ、こんなところに…」「今まで全く知らなかった」「へえ」、「ほう」と、驚くさまを見ると喜びを感じるという。もっともっと驚かせたいと、次のコース選びに知恵を絞る。

「世界の主要な都市でも、江戸時代から400年、鎌倉時代からなら800年の歴史が今に続いているところなんて、まずないんですよ。地方から来て東京に住んでいる人も、それを知れば、東京への愛着が湧いて、もっともっと東京が好きになると思いますよ。江戸城が再建されることを願います」

熱いものを秘めながらも、ソフトな語り口が印象的だった。

取材・文 関川由都子
(トラベルジャーナリスト)